大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

東京地方裁判所 平成3年(ヨ)2242号 決定

債権者

古岡秀人

古岡滉

右両名訴訟代理人弁護士

青山周

宮本光雄

債務者

東京ふじせ企画労働組合

右代表者執行委員長

国分真一

債務者

国分真一

(他六名)

右債務者ら訴訟代理人弁護士

三島浩司

高橋美成

主文

一  債務者らは、別紙物件目録記載の土地及びその付近路上において、左記の行為を、自ら行い、又は所属組合員若しくは外部団体員に行わせてはならない。

1  債権者らが乗用する自動車の進路に立ちふさがり、取り囲む等して、その走行を妨害すること

2  自動車から降りた債権者らの進路に立ちふさがり、取り囲み、面会や文書の受領を強要し、又は拡声器等を用いて大声で怒鳴る等して、債権者らの行動の自由を妨害すること

二  本件その余の申立てを却下する。

三  この決定は、各債権者がそれぞれ、この決定の各送達の日から七日以内に、各債務者のためにそれぞれ金一〇万円の担保を提供したときでなければ、その債権者のためにその債務者に対し執行することができない。

四  申立費用は債務者らの負担とする。

理由

一  証拠及び審尋の結果によれば、次の事実が認められる。

1  債権者古岡秀人は、株式会社学習研究社(以下「会社」という)の代表取締役会長であり、債権者古岡滉は会社の代表取締役社長である。

会社の本社社屋は、別紙物件目録記載の土地上にあり、債権者らは、毎週月曜日、この本社社屋で開かれる会議に出席するため、自動車で出社する。

2  債務者東京ふじせ企画労働組合は、株式会社東京ふじせ企画の元従業員一三名で組織する労働組合である。会社は、かつて雑誌編集等の業務を株式会社ふじせ企画に委託していたが、株式会社東京ふじせ企画は、昭和五〇年から五二年まで、右の業務を株式会社ふじせ企画からさらに委託されて行っていた。

3  債務者らは、昭和五八年五月から平成三年一一月にかけて、概ね、本件申立書理由第二の二の3、同申立書別紙(一)、(二)、平成三年一一月二五日付債権者ら主張書面一ないし四に記載のとおりの行為を行った(以下、債務者らの債権者らに対する右一連の自動車走行の妨害、通行の妨害の行為を「本件妨害行為」という)。

二  債務者らの本件妨害行為は、社会通念上債権者らが受忍しなければならない限度を超えて、債権者らの行動の自由、生活の平穏を違法に侵害し、同人らに精神的苦痛を与えるものである。そして、本件妨害行為は、本件申立て後も継続しており、将来もなお継続する可能性があると認められる。このような場合、債権者らは、右の行動の自由等の人格的な利益を保持するため、債務者らに対し、本件妨害行為の差止めを求めることができると解される。

三  債務者らは、会社は、実質的に株式会社東京ふじせ企画の従業員の使用者であり、本件妨害行為は、債務者東京ふじせ企画労働組合が会社の代表者である債権者らに対して団体交渉への応諾を求めるために行ったものである旨主張する。

しかし、仮に右主張に係る事実が認められるとしても、本件妨害行為は、債権者らの人格的な利益を著しく損なっており、労働組合の活動として許容される程度を逸脱しているから、やはり差止めを免れることはできない。

四  したがって、本件申立ては主文一項の限度で相当である。債権者らは、執行命令に相当する裁判も求めているが、現時点では、債務者らが本決定発令後も本件妨害行為を継続するかどうかは明らかではなく、本決定中において右裁判を行うのは相当ではない。

(裁判官 岡田健)

別紙(略)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例